産経新聞(3月31日付)にこんな記事が載っていた。
「(天皇)陛下の譲位に関する儀式は、4月30日の
『退位礼正殿の儀』のみとなる。
陛下がパレードや饗宴(きょうえん)に消極的とされることから、
陛下のご意向に応えた部分があることは否めない。
ただ、内閣官房皇室典範改正準備室側はあくまで
『陛下の思いを考慮することはありえない』と断言する。
憲法4条が『天皇は国政に関する権能を有しない』
と定めているからだ。
…この姿勢は、式典のあり方の検討段階でも徹底的に貫かれており、
今後も続く」と。
政府は“陛下のご意向は「徹底的に」無視する!”と公言しているのだ。
何ともフザケた話ではないか。
陛下への敬意も感謝も、爪の先ほどもない。
しかも、憲法4条の不当な拡大解釈も甚だしい。
「国政に関する権能を有しない」というのは普通、
以下のように理解されている。
「国政に関する権能とは、国の政治を決定し、またはそれに
影響を与えうる行為を行う権能を指し、そのような権能を有しない
とは、天皇がおよそ政治の領域に介入してはならないことを意味する」
(伊藤正己氏ほか『注釈憲法〔第3版〕』)
具体的には― 「憲法が天皇は政治的権能をもたないというときに
想定しているのは、国事行為において『この大臣の任命には反対だ』
とか『いまの衆議院は解散するしかない』と言い出したり、あるいは
天皇が党派政治に巻き込まれたりするような事態」
(長谷部恭男氏「象徴天皇と『生前退位』)。
陛下が他ならぬご自身(!)のご譲位の在り方について、
“このような形が(公的な見地から)望ましい”と、
天皇としての長年のご経験を踏まえて、
自らのお考えを持たれるのは当然だし、
政府はそれに最大限お応えしようと努力するのが、
当たり前の務めではないか。
「パレードや饗宴に消極的」でいらっしゃるのも、
一部で懸念された「権威の二重化」を避けようとされての事と
拝察できる(皇太子殿下のご即位に伴う一連の儀式にお出ましに
ならないのも同様)。
そうしたご意向を政府が尊重するのは、
憲法4条の国政権能の否定に何ら抵触しない。
にも拘らず、政府はそれを不当に拡大解釈して、
敢えて陛下のお気持ちを蔑ろにしようとしているとしか思えない。
それを報じた産経新聞も、全く政府と足並みを揃えた書きぶり。
無知なのか、不遜なのか。
それとも、ただ政府の機嫌を取りたいだけなのか。